双子の町
石瀬琳々
太陽がのぼると
鳩がえさをついばみ
教会の鐘が鳴り響く
レタマ・ブランカの花が
今日も甘い香りを漂わせている
もうひとつの町にも
ここと同じ朝がはじまる
おはよう
わたしはその町にいる
もう一人のわたしに手紙を書く
もう泣くのはいいの
前だけ向いて
そして笑って
わたしが後ろを向かないと
その町を見ることが出来ない
そっくり同じ石壁と石だたみ
白いレタマ・ブランカの花の下
わたしと同じ顔の少女がほほえむ
日焼けした指がつかのま
差し出される わたしのほうへ
ねえあいたいの
つよくつよく
この手を握って
手紙が投函される頃
夕べの祈りの鐘が鳴り渡る
鳩は巣箱へ帰り
レタマ・ブランカの花は
やさしくつぼみを閉じるだろう
もうひとつの町を思いながら
わたしの一日がこうして暮れてゆく
ねえあいたいの あいたいの
つよくつよく
この手を握って
わたしはベッドにもぐりこみ
もう一人のわたしの手を握りしめる
もうひとつの町にも
ここと同じ夜がはじまる