死者たち
Utakata
(ゆっくりと わらった)
螺旋系に抱き合う
全てが終わった後のくらやみのなかで
遠くにいる小さな影が僕に向かって手を振るのが見える
生まれることさえ許されなかった無数の死者という言葉が頭に浮かぶ
僕自身の背中を振り向いてみたい衝動に駆られる
(どうしてだろうね ぼくらも)
百年後の世界のことを思う
そう遠くない未来の人々が同じ通りを歩いている
僕たちのほとんどの名前は既に忘れ去られている
名前さえ知られなかった無数の過去の死者たちがゆっくりと起き上がる
突然 町並みが過去と未来の亡霊たちの姿で溢れかえる
(ためらいのないふりをして みぎてを)
夜空を見つめる
はるか昔に死んだであろう星たちの光が未だに残っている
彼らの傍を廻っていたであろう大地のことについて思ってみる
死に絶えても光さえ残さないもう一人の僕らの最後を思う
街灯の明かりが遠くまで延々と続いている
(ごめん やっぱり)
僕たちが死んで
一匹の蝿が宇宙を擦り減らすまでのあいだ
天国の時計は一秒も進んでいない
死後の世界なんて要らないと思う
僕たちは百年後の世界のことを未だに語り続けている
(さよなら)
***
くらやみのなかで 僕たちは小さく啜り泣きあう
お互いのぬくもりから まだ宇宙が温度を保っていることがわかる
無数の未来の死者のあいだで 生まれてくる心臓が小さく身じろぐ
永遠と名づけられた僕らの外側に向かって
僕たちは泣いていないふりをしながらゆっくりと笑って右手を振る
また ね