あなたの猫になりたい
ふぁんバーバー
生まれ変わったら
あなたの家のそばの
電柱の脇
段ボール箱に捨てられた
白い雪のような猫になるの
あなたはすこし困ったような顔で
にゃあとなくあたしを拾い上げるわ
赤いプレゼント箱は
きっとあのひとからもらったものね
見上げれば粉雪
そりのこしのひげは青いわ
あなたはちょっと考えて
あたしの名前はユキにするの
なんのくふうもないわ
電気ストーブひとつでも
あなたのひざのうえならしあわせだわ
地球儀は丸く
冷蔵庫はからっぽ
あなたはポテトチップスを
あったかい牛乳でとかして
まずいえさをこしらえてくれるわ
彼女からのプレゼント
ダサいクロスのペンダントだ
ちっとも似合わないのに
あなたはうれしそうに鏡を見るの
あたしはミルクをぴちゃぴちゃなめて
前世でやさしかった
お母さんのことを考えるわ
もう
あなたに料理をつくってもあげられないわ
あなたの洗濯だってしないし
仕事で凹んだあなたを励ましたりもしないわ
あたしはただ
あなたのひざのうえで眠るだけよ
なにも嫉妬しないわ
彼女が来てもおとなしくしてるわ
あたしは白いユキよ
いつか溶けてなくなるわ
なにもかも溶けてなくなるわ
あなたのひざのうえで眠る
猫になりたい
あたしは白いユキ
息をしてるだけで
しあわせよ