雪の日のバス
服部 剛
雪のつもった日のバスは
渋滞でみんな遅刻のはずなのに
なぜかこころやさしい
雪化粧の街を窓外に眺める
人々をぎっしり乗せた
バスのなか
ネクタイのよれたおじさんが
あんパンをほおばっていたり
めがねをかけた女子高生が
缶コーヒーをすすっていたり
壁に貼られた
禁煙ポスターさえも
しろいたばこの先っぽから
おどけた湯気を昇らせる
( 昨晩一人暮らしの
( ストーブもない部屋で
( 布団にくるまりながら携帯を手に
( 裸足の足がさむいと
( 受話器の向こうで言うきみは
( 今頃目を覚ました頃かなぁ
ぼくらはみんな
なんの関係もない
他人同士
それでもみんな
何処かたった一つの国へ向かう
旅人同士な気のする
雪の日のバス
十日前この世を去った
きみとぼくの友達が
すきとおった姿で
こちらに手を振る
雲ひとつない
快晴の空
ぼやけた窓に
射しこむ
一粒のひかりの種
この瞳に
にじむ