正走曲
佐々木妖精

今死んだら困るけど
いつ死んでもかまわない

今死んだら困るけど
いつ死んでも適切だ


俺には今しかないが
きみには明日がある



踏み出せばその一歩が道になる
なんて言ったのは誰だっけ
シラーだっけ
松下こーのすけだっけ
アントニオ猪木だった気もするし
一休さんだった気もする
清沢哲夫かな?
ゲーチェかもしれないね
俺だけの文豪


きみには明日があり
俺には今しかない



足踏みばかりしている老人を見つめていた
彼は諦めていなかった
口をすぼめ目をキョロキョロさせ
蠢く道をしたたりおちる灰を振り払い
芝生への最短コースを目の裏で模索していた

切り刻まれた腕を膝に乗せてきた
ニキビに包帯を巻いたきみすら押しのけて
彼だけが日向でシャンプーをなびかせる
放熱する皆の赤子だ

目つきの先で待ち構える
進路を正面で見つめている
顔を読み
つま先のバーコードで蹴り上げ
地雷をひっくり返し焼却する
蟻が瓦礫を跨いでいく
気づかれない気配りってのに目覚めたんだ
彼と友達になりたくてそうしてた


ベンチへ落とした涙が煙たかった
笑うしかなくて笑っていた
夏は足跡すら残さなかった
春なら一緒に泣いてくれたのに



俺には今が果てだけど
きみには明日が差し込むだろう

ガンダムが
どうして人型なんだと
ツッコミ入れず
たった一つの理不尽を
受け入れれば開放される

どこも痛くないか
まだ持ちそうか
包帯がいらなくなったら
タバコ三本で買い取ろう
大学ではドイツ語をとるのがいい
神はドイツ語で話しかけるようだから



賭けでもしよう
俺もきみも
100年後には死んでいる に
全財産
タバコ1カートン
生き残ったら伝えてほしい
交差しろ
その座標は安全だ


自由詩 正走曲 Copyright 佐々木妖精 2008-02-04 21:10:11
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