栄光の下
木屋 亞万

恋する乙女は日常が戦場
化粧の下に素顔を隠し
背筋を伸ばし家を出る




殴り合う戦いは時代遅れ
最近は空気にこっそりと
毒を盛ってしまう
情報に乗っかりながら
関係の上位を狙う
そのために毒は必需品
個人プレーに走りすぎれば
苦い空気を吸わされて
表情が曇ってしまう
だけど戦場で助けを呼べば
もれなくやってきてしまう
援軍より強力な悪魔
攻撃より防御の方が難しい
そんな時代の性質を利用して
攻撃されない程度に攻撃する




みんな目指しているのは
空に輝く太陽であって
誰かをおとしめる事ではない
ないはずなのだけれど
毒で内臓を傷付けあって
のたうちまわっている
まるで支柱を失った朝顔
太陽に近付くことすら
全くできない末期症状
恋する乙女は太陽を
太陽として眺めながら
がっしりとした支柱を捜す
自分を支えてくれる
軸のある真っすぐな柱
恋はいつしか愛に染まる
朝顔は朝に咲く乙女
初恋の太陽に向かって
そっと愛を開いて見せる
側には支柱が寄り添って
夜が来て萎んだ花の奥で
静かに種を作っていく




恋する乙女は今日もまた
家を出る前に朝顔を見る
玄関の向こうで太陽が笑う
支柱は静かに立っている


自由詩 栄光の下 Copyright 木屋 亞万 2008-02-04 01:32:54
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