女のことば 
服部 剛

「せくはらは、はーとがあれば、いいのよね」 
勘違い親父の部長を嗜(たしなめ)めるように 
女友達はぼくにささやかな 
愛の秘密を教えてくれた 

「ちょっくら金をおろしてきます」 
ふたりの友の背中を 
居酒屋「エポペ」に送りこみ  
黒網タイツの姉さんの 
お誘いの声をかわしたふりで 
歌舞伎町の人ごみを
コンビニ銀行へ 
ずんずん歩く 

なけなしのおろした金を 
そっとふところにしまい 
そんな女の言葉を思い出しながら 
新宿区役所前を
ずんずん歩く 

さっき女友達が3分間も立ち止まり 
いいおうちにいくんだよ  
と呟いたペットショップの檻の中から
ガラス越しに( にゃぁ )と鳴いた 
白い子猫はすでに姿を消していた 

「エポペ」の入口に入ってゆくと 
隣の店のきゃばくらの 
猫耳をたてたぴんくの顔した風船達が 
寂しがり屋で真っ赤な顔の飲んだくれに 
いくつものはーとを 
ゆらしていた 








自由詩 女のことば  Copyright 服部 剛 2008-02-03 23:31:01
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