林檎落下
エチカ

午前3時に咲いた 鈍色にびいろの花腐し
嘘を塗り重ねて
すこし刺々しく君に抱かれた柔肌が 
うっすらと赤みを帯びる


君は私の名前を呼ぶ どんな抑揚もつけずに
ただ平淡に溺れるために 何度も何度も 同じ声色で
鈍色にびいろの光を閉じ込めていた 浴室3cmの罠 
濡れた髪を押し当てたシーツの痛みは
仕掛けられた運命の落とし穴

死んでしまったのだ あの日
擦り切れてしまった 花腐しの意味も知らずに



林檎は 落下する



君は知らない
君は知らないでいる
私が嘘をついたことを
君は知らないでいる

消え入りそうな夜に
赤いビロードが 私を狂わせようとする
耳たぶの裏がじん、と赤い
今夜あなたを思って濡れる 私の瞳



不気味な声で鳴いた深い孤独の魂よ
最後の審判を知らずにもがいている深い悲しみよ

君はまだ
知らないでいる


反芻するアスファルトの憐憫
速度を落として泣いた夜
獣達はいつも 牙を持たないで
心を濡らして 泣いている



今夜君は知るかもしれない
今夜君は黙するかもしれない
それがどんなに私の心を奪ってしまうかも知らないで



私は待つだろう 

意味の無い花腐しの 鈍色にびいろの朝を待つだろう




君を恐れて
今夜 林檎は落下する





自由詩 林檎落下 Copyright エチカ 2008-02-03 22:11:28
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