雪だるまは次の日に解ける
狩心
なぜ作るのか
なぜ表現するのか
なぜという思考砲を放棄する事は 温めた卵の爆弾を 不法投棄するに等しかった
思考は 断続的にズレていく エメラルドのかさぶた 赤の中に緑 グジュグジュと沸騰している 子供を産む事は 二人の願いであった 陰と陽が噛み合う様に
ここでまた なぜという思考砲に寄り添って 二項対立的な両親が目覚める SやWに♯を付けた
。
。の中に悲鳴 もしくは 安堵の表情
セメントで固められた死体は もう既に 両腕を切り離し
その切断面に 花を咲かせていた
一つの腕は行動を意味した
新しい出会い 新しい仕事を達する毎に 崩壊していく自我
部屋の中には 置き去りにされた物々が 不可能な社会復帰を余儀なくされる GやRに♭を付けて
専門医師はこう言った
「あなたにはピアノの練習が足りない。そして、子供の頃、あんなにも練習した書道の経験が、美しい感情の字体が、キーボードに汚染され、活かされていない。そう、あなたは、提供され、揃えられた一般的な形式美に整えられ、陳列され、意味をなくしていく。」
A
白い壁に 黄色い瞬き
フラッシュの吐息 洗濯物は全て雪の中に埋もれた
B
もう一つの腕は不動を意味した
生活力が整う度に 生活を放棄していく
ある一つの方向に進むべきだと分かった時
それ以外の三つの道を同時に抱え込み
そちらの方向へ前進する うぅぅの声
裸の上半身にベスト ブラジャー しみったれたパンツを履いて
何度も 下水の中に飛び込み 嘔吐した白昼夢
不動の神は 時間差で
身体の中の幽霊を 何度も交換した
朝焼けが胸糞悪い
大体無理な難題を引き受け過ぎている
健全な身体を持つ人間は居ない 全ての人が 被爆している
詩が(身体が) あらゆる方向に伸びる事は
絶滅の危機に反している動物に ささやかな伝統を告げる
ああ、それは何処かで見た事がある
薄い罫線が引かれた大学ノートを広げたまま
そこに定規を押し当て 消せない油性ペンで 罫線をはっきりと黒く 補強するように
私はそこに・・・を打ち続ける
横に打つ時もあれば 斜めに打つ時もある
罫線を超えて 縦に打つ時は
痛みが生じる 被爆した人間が
もしかしたら私が産む子供に 障害が遺伝されるのではないのかと 不安に駆り立てられながら それでも産みたいと 自分勝手な未来は 小さな可能性に羽ばたく
ベストセラーで金がいっぱい入ってきて困った
それは次の対立の壁に備え 世の中に散布するべきだ
日々の爆弾が空中を這う 隣近所の主婦や子供が
疲れた男を惨殺するニュース 柔らかい神は
いつでも目の奥に潜む
目の中に潜む三角定規
これ一つでどんな図形も描ける
でも 本当は知っている
逃げられない事や
どんな事も出来るわけではないという事
束縛や抑圧が 生命を存続させる唯一の手段だという事
なぜに向かって飛来する 宇宙人の船
絶望的に崩壊した家族の絆は
ゆっくりとした時間の中で行動
もしくは 不動の目の中で解決される
なぜ 表現するのか と聞かれた時
私はそこに 未来があるから と答える
なぜ 作るのか と聞かれた時
私には解決できなかったから と答える
地球の地軸がズレていく 真横になるまで
震度ゼロの悲鳴
* * *
気付かない内に 家の前に雪だるまが出来ていた
隣近所の主婦や子供が ささやかな愛情を持って
今日一日の為に 作り上げた事件だ
私はそれをニュースとして記述する
孤独な魂の奥へ
もっと突き進む為に
自由だ
セメントで固められた死体が 最後に言い放った言葉だ
だとしたら今 生身で動いている死体は 自由ではないと叫び
死者の夢を見るかもしれない
音が少しずつ収縮していく
しかし無音の世界はどこにも無い
道端に落ちている切り離された両腕を抱えながら
涙した夜が
あなたにもあるだろう
ただ、あなたが表現する度に
私はあなたに近づく
ただ、あなただけの存在が充満し
地球に 死の灰を降らせる
今日から
スカートを履いて出勤する
上半身は外国に置いてきた
両足は家の中で蹲るばかりだ
上半身も両足も失った腰の部分だけが 宇宙船の円盤のように回転し
町を徘徊する
誰もが目を失ってドッキングする
それによって生じた見た事もないメカロボットSWGR
弾幕が拡散される音を聞く
道は開かれる
空中の亀裂に
* * *
太陽が動かない為
時間の感覚を失うだろう
記憶が三分で消滅する為
何が何だか分からないだろう
しかしあなたには
百円と少々で買える 大学ノートがある
震えた手でそれを開き 一つずつ読み直そう
ベクトル
ベクトルの海が座礁する
天地の渦に
轟々と風が 旗を色付ける
何処までも逃げて夜
月が何処までも追いかけて来るように夜
夜
夜
夜
宇宙船は帰還する
作ってしまった未来に
家の前で立ち尽くす
雪だるまが解け始めている私は
時間の意味を思い出す
計算し尽くされていた
抽象画の中に
ほんの一握り
子供の頃の思い出が過ぎる
そうだ、再生される為には
深夜の森で一人
寒さを忘れて飛び跳ねなくてはならない
隣近所の主婦や子供に 触発された男が
深夜の森で一人 神と対話しながら
雪だるまを作り始める
* * *
TVで見た手品には
種や仕掛けがあった
マジシャンが用意した
では、私には
誰が憑依している?
軍服を着た連中が
ザッザッと音を立てて交信の練習
二階から飛び降りた連中が
地面の距離をもっと遠ざける
早起きをした
生まれたての老人のように
大丈夫だよお母さん
朝陽は真っ赤だ
あなたよりも私は
先に年をとってしまった
今から追いつく 表現して作り上げられる未来に
と、そんな平凡な着地をするわけも無く
私は私の全てを否定したいと思う
その行為を怠ったら
もう二度と
生の声は私に
囁く事は な い だ ろ う
だから明日
カンカン照りの太陽の下でも
雪だるまは解けないままで
私の時間を何度も止めてくれるだろう
いいんだ
もう二度と
雪が降らなくても