節分 '08
北大路京介

「鬼が豆鉄砲喰らった顔見たくないか?」

久しぶりに父から届いた携帯メール


父に会いに行くと
父はルパン三世の主題歌を口ずさみながら煙草をふかしてた
普段は煙草なんて吸わないのに
マルボロ

父は お手製の豆鉄砲を自慢してきた
割り箸と輪ゴムで昨夜作ったという

"ワルサーP2008"と名付けられたその豆鉄砲の威力は凄いものらしく
「節分には、鬼鍋を喰わしちゃるけんのー」と意気揚々


「とうさん、現代では調査目的でしか鬼を捕獲してはいけないんじゃなかった?
 先日のニュース、知ってるだろう?
 とうさんが鬼に豆撃つどころか、とうさんが過激な捕鬼反対者に撃たれてしまうよ」

僕は鬼の肉を食べたことがない
父が小学生の頃は、給食に鬼の肉がよく出たのだという

鬼の数が極端に減ったのは、
鬼保護を言い出してる連中が昔、鬼を乱獲したから
学校の先生は、そう言ってたっけ

鬼に豆をぶつける行為は野蛮だとか
鬼は観て楽しむものだとか
そういうことを言う人も このごろは少なくない

父は黙って、豆鉄砲を解体し始めた
いつのまにか 父の背中は小さくなっていた

自称悪魔の父は、寂しそうに言った
「我が輩、節分には豆を10万85粒食べるので、仕入れておいてくれ」


「とうさん、そんなに豆食べたら、お腹こわしちゃうよ
 節分には美味しいロールケーキを買ってくるから、恵方に向かって丸かじりしましょうね」




自由詩 節分 '08 Copyright 北大路京介 2008-02-03 19:21:13
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