思い違い
小川 葉

ジャスコで買い物してたら
知らない子供にお父さん、と呼ばれて
違うよといくら言ってもきかないので
しかたなく僕は
その子のお父さんのふりをした

おうちへ帰ろうというので
ジャスコの近くにある
似たようなマンションの
似たような部屋に
その子に連れて行かれた

しばらくリビングで遊んでると
奥さんが帰ってきたらしく
卵買ってきてくれた?
と、僕が旦那さんと違うことに気づいてない
というよりも
僕が旦那さんだと
すっかり思い込んでるようだった

さっきまで知らない子供だったのに
不思議に自分の子供に思えてきて
名前も知ってる
いつしかこの部屋にも見覚えがあり
妻が買い物リストに
卵を書き忘れたことを思い出した

ふたたびジャスコに卵を買いに行く
さっきまで僕の妻とばかり思っていた女の人が
僕ではない僕と買い物してる


自由詩 思い違い Copyright 小川 葉 2008-02-03 16:36:55
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