自殺志望の友達へ贈る詩
吉田ぐんじょう


この頃は
新聞の死亡記事を切り抜いて
町内の電信柱に
べたりべたりと貼り付けることにしている

今日もこんなに沢山の人が死にました
毎日毎日人は死にます
これだけの人が死ぬ中で
わたしたちが生き抜いているのは
奇跡と言えるのではないですか

ただそれだけのことを
言いたくて

だけれど町内にはもうほとんど
人は残っていないのである
みんな世を儚んで
自殺したり発狂したりお酒や薬を沢山飲んだりして
きちんと立って歩いているのなんか
犬くらいしかいないのである

それでもわたしは今日もまた
死亡記事を切り抜いて
町内の電信柱に貼ってゆく

今日もこんなに沢山の人が死にました
だけれどわたしたちは生きています
世の中もそんなに
捨てたもんじゃないですよ

さっきから人は一人も通らず
手も汗でぬるぬるしてきて
ヤマトノリはもうなくなりそうだ
それでもわたしは止めないのだ
今日は大変夕暮れがきれいで
人間の血なんかとても及ばないくらいの赤さで
これを見るためだけにでも
生きていた方がいいんじゃないか
そう思って少し泣いた

泣いている途中で犬が来て
電信柱におしっこをひっかけていった



自由詩 自殺志望の友達へ贈る詩 Copyright 吉田ぐんじょう 2008-02-03 04:10:03
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