胎内帰還
山中 烏流




湿る度の、音

響いたあとの名残は、
何かしらのかたちで
沈んでいく

 (奥底で
 (深々と眠りつつ、

震える指先は
鼓膜をなぞりながら
(呼吸を、
ひらめいていく


******


視界は
振り向いたあとで、
どこまでも透明だった

小さな部屋の中で
瞳だけが
しっかりと、泳ぐ

鮮やかな体温が降る
その、掌の上で
いつしか私の呼吸は
幻になっていた


なっていた、から
、そして


******


葬った視線に
胎動は
瞬きを許さない

閉じようとする度、
開かれるという常


溢れてしまう
しまったから、触れた
その刹那に

弾けていく、また
 (水泡
溶けて、解けて


暗転、


******


 静かだと、言う。
 
 言ったあとは、淡く
 開かないものを示しては、
 その余韻に溺れる。
 
 この指では、
 何も、誰も触れない。
 
 なぞることで、開くのだと
 私の呼吸は
 繰り返した罪を見て、
 揺らぐ。
 
 あれは産声だろうか。
 
 とうに、
 忘れ、て、しまって、
 /。


******


流れ落ちる
私が、静かに、そして
流れ落ちる

呟いた声
開かれようとして、閉じた唇


瞬いたあとで、すぐに
滑り落ちてしまうから
私はいつだって、
それを
生と呼んだ


白濁の瞳
水の底で佇む、魚
その
地を掴んだ尾びれは
どこまでも、白く

 (流されて、いた


溶けて、
しまうのだと


******


跳ねた音/揺らぐ、

私は水底へと、
呼応したままで
俯せる


(足跡は、遠く
気付いただろうか、


その爪先は
きっと、儚過ぎるほど

白い。





 


自由詩 胎内帰還 Copyright 山中 烏流 2008-02-02 21:15:30
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