菫と百葉箱
塔野夏子

いちばん旧い校舎の
さらにその裏
もう誰も見に行くこともない百葉箱
そのそばに菫が咲いている と
君が云ったのが
はじまりだった

ふたりはそれからそこで
いくつかの秘密をかさねた
ためらいとはじらいとが
甘やかにさざなみして――

その夢中の日々は あえかに短く
卒業と共に
終わりを迎えた






自由詩 菫と百葉箱 Copyright 塔野夏子 2008-02-01 21:28:20
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春のオブジェ