クロール、おそらくは過酷な
ホロウ・シカエルボク




すべてに○をつける
自分に関わる
すべてにでかい○をつけて
眺めたり撫でたりしてみる
眺めたり撫でたりしたあとは
かたっぱしから
憎んだり殺したりしてみる
憎んだり殺したりしたあとは
深呼吸して
そのうちの幾つがほっとさせ
また
そのうちの幾つが苛むのか
じっくりと見極めてみる
時には泣き
時には怒る
後悔の種類は無限にある
希望は多分
たったひとつの丸い窓


自分の中で死んだものが大好き、終わったものは歯向かわない
墓も作ってやらない、野ざらしにする
無残な死体をついばんで
新しい生命が産まれるのだ


野ざらしの死体どもは腐り始めて固体と液体の中間くらいになる、そこに飛び込んで向こう岸を目指すのだ、おそらくは生涯で一番力を必要としなければやり遂げられないクロールで…たどり着く岸辺には子の宮が開門している、子の宮はちょうどよい状態を保ったまま新しい生命がそこを潜るのを待ち…待ち焦がれすぎて少しよだれを垂らしている、いつかその小さな門から溢れ出すだろう新しい生命、それは新しい泥にまみれている…ちょうど死体の海によく似た固体と液体の間みたいな
それはちょうど死体の海によく似ている、ただほんのわずか、ただほんのわずか、紅色のコントラストが強いのだ…それは女の色で有り、新しい生命の色でもある…その泥の中に手を差し入れてより分けるのだ、産まれたものとそうでないものを―新しいものが初めに知るものはきっとそんなものにまといつく臭いのことなのだろう―そこには実際、凄まじい臭いが漂っている…それは女の臭いであり、また新しいものの臭いでもあるのだ


すべてに○をつける
すべてに○をつける、もっと女のように
新しいもののように産んでいかなければならない、手を差し入れたときの感触を覚えているか、ただの温もりではない温度の在り方を、すべてに○をつけなければならない、すべてを憎んで殺してしまわなければならない
殺すことをよくすれば愛することもよく分かる、新しいもののように産んでいかなければならない、死体の数を数えて罪の種類を把握するんだ、それがどろどろの海に変わってしまう前に
眺めたそのときと憎んだそのときは変えがたい瞬間なのだ、そこに知ることがある、そこに知ることがある、そこに知ることがある、そこに、そこに知ることがあるのだ―すべてを見つめることは出来ない、次は必ず用意されるから
同じことを違う深度で何度も何度も繰り返す、同じ指先が同じものを探すのに






僅かに違うものを
確実に知っている




自由詩 クロール、おそらくは過酷な Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-01-31 19:35:10
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