「ハルク」
菊尾
考えていた事が逆さになって落ちていく
底の方に生息している動物が
落ちてくる思考の欠片を食べている
仄かな暗がりの中で遊んでいる子供達は
落ちてくる思考を軒下で見守っている
治まればいいのにとか
もっと落ちてくればいいとか
バラバラにそんな事を思い浮かべて
静止画で保存されている記憶達は
いつから動かなくなってしまった?
網目のフェンスを指でなぞって鳴らしたら
いつもと違う道に立っている
少し外れたら不安だけど新鮮で
すぐに何処だか分かるから
そんなに怯えなくてもいいよ
チェック柄のワンピースに捕まった
僕の体はその隙間からでは逃げられない
不自由を与えられて自由の意味を知る
彩りは誰でもなく僕の右脳が添えている
住み心地はどこだって悪くない
くゆり踊る陽炎の列
伸びたツルは巻いて巻いてロココ調
安心できない季節だから
君の情緒不安定は僕が見守るよ
ラムネを行きつけの駄菓子屋で買ってから
あの陽炎の後を追いかけよう
夕暮れの合図をヒグラシが知らせてくれるまで
放課後のチャイムがグランドに響くまで
長く這う影
廃線になった線路の上を歩きながら
僕らは一体どこへ行こう
遠くで花火の音がする
カキ氷が食べたいと二人の意見が一致する
たとえ君に嫌われても君が病まなければそれでいい
夢に住む動物の話をする
「あたしその動物五匹飼ってる」
君が一歩先を行く