葉leaf

自動車の走る音が
強くなり弱くなり
いくつも重なり合いながら
都市の柔らかな肉声として
アスファルトの上を満たす海として
ビルに押し寄せては砕けていく

ヘッドライトの百鬼夜行
ライトはとてもみずみずしくて
その所だけ厳格に闇を裏返している
明るい部屋の中で
僕も中途半端に裏返されて

屋内と屋外をつなぐ
窓の残酷さに均されながら
声だけの人間に電話をかける
いえいえこれは人間ではありません
僕の孤独と電話機の軋轢から生じた
つややかな円の集まりです

潅木の常緑の葉の
豊かな盛り付き具合が
ひとつの大きな料理のように思われた昼
僕はそれを目で食べたのだった
食事は「人生」と呼ぶには楽しすぎる
肉と野菜をいためる夜
口で食べてしまうことは不潔だ

闇に負けていくかたちの数々
辿り着く先は距離のない溶液
昼間の出来事が黒く沈殿している
蛍光灯によって救われたかたちの数々
辿り着く先は距離のある川
夜の出来事が次々とせせらいでゆく


自由詩Copyright 葉leaf 2008-01-29 13:20:51
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