夏泊海岸
たりぽん(大理 奔)

潮風が防風林の松を
まだか、まだか、とたたいて
浜辺で手招きする海が
防波堤でばらまいています
ひとりでくる浜辺が
こんなに広いとは知りませんでした

小さい岩のあるところ目指して
真っ白に見える流木を集めながら
歩いていきましょう
あしあとはわだちではないので
とぎれとぎれですが
たどり着く場所まで
迷子にはならないでしょう

帽子が飛ばされてしまったけど
渡り鳥のように見えたので
そのまま林の向こうにきえていきました
小さな岩陰でしたが
流木を積み重ねて火をくれると
とても暖かにゆるやかでした

カバンから手紙の束を取り出すと
数枚ずつ焚き火にさしいれます
それは、さっと焦がされて
渡り鳥のあとを追います
まだか、まだか、と
ばらまかれた雪が
また飛ばそうとします

手紙は二十七分で一通になりました
最後の言葉だけは読みました
それはいつかの暑中見舞いで
他愛のない紙切れでした
右から焼けば、終わりが切なくて
左から焼けば、始まりが懐かしくて
目をつぶって投げ込むと
焦がされることもなく
渡り鳥のあとを追っていきます

潮風が防風林で
今日、手紙を焼いています
声をさがすように
ひとりぼっち




自由詩 夏泊海岸 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-01-28 00:57:57
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