宙車
木屋 亞万
寒い夜が
自動車の窓を
白く塗り固めた
凍える座席に
うずくまって
眠る冥王星
冷え切った恋が
空調の隙間から漏れ
助手席に当たる
疲れ切ったエンジンが
怨恨に二度空回りをして
息を重く絡ませる
照明の光る車が
正面からやってきて
窓を白く明らめる
手の平に乗せた
覚めてしまった目を
優しくにぎりしめ
息を吹き込めば
かじかむ指の隙間から
流星が噴き出す
弾力のある恋の
淀んでいる座席の下
砕けた星が舞う
冥王星は足で
冥界を掻き混ぜて
眠りについた
自由詩
宙車
Copyright
木屋 亞万
2008-01-27 21:49:25