留守番の人
小川 葉

留守番の人が
玄関の扉を開けて
私は留守ですが
もしよろしかったら
と言うので
少しお邪魔することにした

壁にある
ご主人が描いた絵の話をして
ご主人は、と聞くと
留守ですの、と答えるので
それでは留守番のご主人は、と聞くと
亡くなりました
と言って俯いてしまった

それ以上は悪いので
ご主人以外の話をして
それでも長居するのも失礼と思い
おいとますることにした

そろそろ留守の妻が戻る頃だ
と思いながら、家に帰ると
さっきまで一緒だった
留守の奥さんが
私の家から出てきた

留守番の私に見送られて
私とすれ違う
留守の奥さんと会うのは
はじめてだったのに
首筋には私の
接吻の痕があった


自由詩 留守番の人 Copyright 小川 葉 2008-01-27 14:21:02
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