海と空の間
doon


 時間の過ぎた大きさを
 ときに強烈に感じる事がある
 不思議と馬鹿をやっていた時代に
 さりげなく聴き濡っていた歌
 時代を経た瞬間
 実しやかに去来する空虚感
 一歩も二歩も向こうにあったと思っていたものが
 何れやがてという姿を仮初め

 珊瑚の願う空模様
 
 多くを置いていた事がはっきりと見える
 呼吸の一つ一つが 故郷の中で突き動く中
 大きくなった人の心の形まで
 誰しもそのままではなくなっていくのが
 泣いていいものなら泣いてみたかった

 願わくば 珊瑚に空を与え給え

 ただひたすらに現実は伸びている
 この一言の中にいくらの残酷さが産み落とされており
 嘆くことを躊躇わせていくのだろう
 私はいつからか電球になりたかった
 いつか
 いつか訪れるよう
 ただ一つ突き刺さる空虚感が
 不確かに生への道標になっていた

 珊瑚は知らない 海の向こうに空気があることを

 人は知らない
 死の向こう側にある本当のものを
 知らないまま生き 知らないままに死んでゆく
 精一杯身体を伸ばし
 呼吸し 食し 子孫を作り 行き着く先まで生きていき
 やがて死んでしまう

 まるで
 私達は空気という 海に抱かれて生きる珊瑚の様だ
 その先の世界を
 僕らは知ることはできない


自由詩 海と空の間 Copyright doon 2008-01-25 02:10:34
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