「底」
菊尾
まだ拭いきれない残酷さは
幼少の頃から根付いた罪深さは
その胸のポケットに仕舞いこんでおけばいい
連なる群青の浅い夜と深い朝
いつ芽吹けばいいの
だれが運んでくれるの
分からずやの僕は何かに呼び止められる錯覚の最中
挨拶はしていない
そこまでの間柄にはならないだろうから
挨拶はしていない
明日を足の甲へ乗せて歩いているようで
落とさないようバランスを保つ事が難しい
落としたら何処へ行くのだろう
落としたら何処へたどり着けるのだろう
見たことのない世界が多いのは
どちらでもない狭間で漂うことが多いから
時折垣間見る世界の断片
こじ開けて入り込もうとすると消滅してしまう
僕の視線は定まらず身体は浮遊する
また増えた君との会話が
僕の支えになり
僕を壊していく
それは同時進行でとても緩やかで
何よりもそうなる事を
望む僕がいる
横たわる右腕は下敷きに
薄い緑の底で平行になっていく
僕と君が疑うことを知らなかった頃
日常が縦に横に揺れていた頃
まだ互いの名前を聞いていなかった頃
白みがかるよ
僕達の理由も
拒んでいた現実も