関節
縞田みやぎ
ぼくの絵には眼がないのだ
あのぎょろりとした
目玉がついていないのだ
食卓の上に
がたり がたり と
朝食が並べられていく
寝床から起き上がったぼくは
靴を履いていない
そのことがなんだか気恥ずかしく
椅子の下に足先を隠した
少しも見えなくはならないのだが
折りたたむように して
食卓の上に
これからの食事が 並べられていく
ぼくは 今朝 起きるまでに
それはそれはたくさん
たくさん 生きてきたのだろうと思う
食卓には何日か前から 生けられた花があって
もう ずいぶん先から出立し
ここに至る に しおれ始めている
がたり がたり と
冷えた牛乳の おかわりが注がれ
ぼくはまた気恥ずかしく
指先を隠す
がたり がたり と
ぼくは胃袋を育て 育て
塊となる おおきな おおきな
ふくらむ手足をもっている
端の方まで ぼくだ
端の方まで そう ぼくだ
乳飲み子はどこへ行った
もう 描かなくてはならない
乳飲み子はどこへ行った
きっともう ぼくは たくさんに生きたのだ
乳飲み子は どこへ行った!
節々 ああ 痛む
ああ痛む 痛む
ぼくの絵には眼がないのだ
あのぎょろりとした
目玉がついていないのだ