逆イマジン
小川 葉
外国に行きたくて
海を歩き続けた
それなのに
海はどこまで行っても
海のままだった
道に迷わないように
紙幣をまき続けた
それも尽き果てる頃
家に帰ろうとして
鞄から地図を取り出した
それは全く役に立たない
通りすがりの老人が言った
背中にやわらかい戦争の匂いをさせて
それはとても古い地図だ
老人に渡された
陸地のない地図を見た
国境どころか
地名さえ印されてない
内側も外側もなく
海が海のまま
あるがままに広がっている
そこはまるで
新しい戦前のようだった
自由詩
逆イマジン
Copyright
小川 葉
2008-01-22 02:04:25