散歩するように
水町綜助

話すことがなくなったから
もう眠る
そんなふうに毎日を終える
行きたい場所がある
だから歩く
ボールペンを一本
手のひらにたて
倒れた先に歩いて
歩いては
四つ辻
また立て
倒れた先に歩いて
また
ペンを立てる

倒れた先が路地でなく
白茶けた塀なら
そのうえを歩く
少し屋根に近く
町から浮いて
空に近い

その高さはぽかりとした
ちょうど落丁のような
空白だから
項を継ぎ足すこともなく
そらんじよう

両手の広げかたで
バランスを
落ちないように
気をつけて
落ちてしまうなら
できるだけ

日のあたる方へ
明るい方へ

飛んだ
影を
よく見て
何にも触れず
路上に浮かんだ
空中の

その
あきらかな
影を
よくみて

きっと
絡まって
手のひらに走った
くりかえし
数えられない
ペンの線のようだから





自由詩 散歩するように Copyright 水町綜助 2008-01-22 01:01:51
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