雪の日
はな
手袋の
こすれるすきまから
しろい空気を ふー、と
吐き出すと
それは
青い空にのぼってゆく
きれいなけむりに
よく
似ている
それで
つむじは むずむずして
町も
ゆきのふった次の日は
すきとおる
ちいさな子の泪も
ポストの色も
あの日
翳った教室に
とびこんできた あなた
跳ね上ったかみのけと
らんざつなあしおとが
耳を
過ぎる
知らないことばは
やっぱりまだ
たくさん ある
あの時
あなたの口が 何と言ったのか
私はもう
おぼえていない
から
言いたいことがあった
いつも
話すよりも たくさんのことばで
てんめつする
ひかりのように
今より もっとあいまいで
だから
こうさてんの信号がかわるとき
あなたの声が時々
胸に
鳴るのかも
しれないね
あなたは桜のはなびらを踏めなくて
春
あたたかい空気を
かきまぜる
ふりむいたときに
そこにいますように
私も
ゆるやかなつめたさが
やわらかく
肩をつたう