遊泳禁止海岸
たりぽん(大理 奔)

波打ち際に立つと
のどが渇く
でもそれは欲望ではなく
思い出した事、だと思う
帰る波がめんどくさそうだ
指の間に挟まった砂もそう
いらないと思った途端に忘れられなくなる

  生まれ変わるために
  生きるのではない
  ましてや古くさいまま
  朽ちていくのでもなく
  変わらないために
  新しくなっていくこと
  それは何という呼び名だったか
  欲しいと思った途端に思い出せなくなる

波打ち際をぬって歩くと
冬の冷たさを思い出す
奪われていく体温ではなく
冷たさを受け取るということ
温度なら
あの星空がすでに奪った
遠い遠い
 
、遠い

  流木!


翻弄されながら乾いて
打ち付けられてまた朽ちていく
のどの奥で夏の香りがはじけ
息苦しさに耐えられず
まっくろな防砂林を見上げると
黒髪に砂を蒔いたようで
釘付けになる
でもそれは欲望ではなく
奪われることもなく
うち寄せる波が
洗い流せないものたち



自由詩 遊泳禁止海岸 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-01-21 00:54:07
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