テロリストの恋
狩心
あなたに
君のセックスの意味が分からないと
意味の分からない質問をされて
質問という言葉の意味を問い直す作業をしていたら
分解された
別れられないはずだから
分かり合える
離れ離れになってもくっ付いてるように
空気中のセックスの数は
東京の人口密度を超えた
大阪から名古屋
名古屋から東京
東京から北海道
北海道から海を潜って
南国の沖縄で原爆実験に耐えて
海の中に溶けた
わたし
あなたに
君のセックスの意味が分からないと問い詰められた時
体中に張り付いた言葉を剥がす行為
と
答えるべきだったかしら お兄ちゃん
あなたは今でも
アメリカの爆撃機を
ゼロ戦で撃ち落してくれる
零式艦上戦闘機。
太平洋戦争直前に完成。
航続距離が長く、軽快で運動性に富み、
当時の世界水準を抜いた単座の高性能戦闘機であった。
戦闘機はあんたに夢中
戦争したいのよ
ナイフとフォークで上品に頂く西洋式のテーブルマナーについて
原子爆弾を落としてみたい
体中の皮膚がデロデロになったあなたは
涙も流れない 液体が全て蒸発した夜
声も出す事ができない表情と
ふらつく立ち姿だけが 夜を逆再生して光
原爆の背景を夕暮れ色に染める
体中の皮膚がデロデロになったあなたは
体中に張り付いた言葉が剥がれたよって
笑いながら死んだ
分かり合えるだろうか
離れ離れになってもくっ付いてるように
空気中のセックスの数は
ワシントンD.C.の人口密度を超えるだろうか
手が挙げられないという質問
太平洋の中に漂っている
細波のボクサー
反則行為を駆使して
世界ヘビィ級タイトルマッチに挑戦
はぁはぁ 吐息のジャブ
(魚たちがくすぐる)
コメディみたいなバイオレンス
(魚たちが皮膚上に上陸作戦)
空気の中にあるセックスを求めて
呼吸する(第三次世界大戦開幕)
口から放たれた毒針が
対戦相手の目の中心に突き刺さる
ミュージカルの舞台のラストシーン
拍手喝采を浴びながら暗幕が下りる
わたしの目に
シャッターは要らない
おまえの目に
カメラのファインダーを取り付けて
意味の分からない質問を羅列してほしい
土下座して
わたしの前で
本当は
君のセックスの意味を知っていた
ただ
僕たちは、立ち上がる事ができなかった
両足を撃ち抜かれて
ガクガクしながら歩いてた
事実、歩いていなかった
浮遊していた
新宿や渋谷、原宿の雑踏で
戦時中、敵国で誰にも看取られずに死んだあの日本兵のように
心の中を彷徨った
血迷いながら血走っていた
血に飢えていた
誰かの血を吸わないと生きていけないのだと
恐怖していた
全て過去だった
過去が町中に張り付いていた
都会の雑踏で
小鳥の囀りが生命の光を感じさせる時
先進国のビルが崩壊する
圧縮された空間に
折り曲がりながら吸い込まれていく
その時の音
僕たちの体中の骨が圧し折れる音
キシキシとニヒルな笑い声を上げて
だから今夜は帰さない
分解された体が
もう一度組み直される時
あなたとわたしが一つになれたらいい
マウスピースを外して
リングから降りた時
無言で、背中と汗で
語る事ができたのなら
一緒に歩いていける気がする
誰も見た事の無い
砂漠の真珠貝の中で
婚約指輪はテロリストのバッジ
未来も過去も
この手の中にある
僕たちの子供は
最大多数の最大幸福を掲げる功利主義の届かない
宇宙の真空の亀裂で産み落とそう
危険な奴ほど危険じゃない
危険な奴ほど真実を求めているのだ
ああ、真実ではないという真実
ああ、僕たちの存在
ミキサーで果物とミックスして
ジュースにして駅の売店で売りたい
一日一杯 三日で三杯
野菜も摂らないと危ないですよ
ああ、こうして朝
君と二人で駅のホームで空気を吸っている
そろそろ「呼吸」の対義語を始めようと思う
準備はいいか
息を止めたらもう二度と口を開けるな
潜水艦はパナマ運河を越えて
メキシコに入国する
世界地図は何の役にも立たない