冬と声
木立 悟
空つかめ空つかめよと叫ぶ声かたむけるたび赤く咲く声
ふいに鳴る雷の背に乗せられて紅もこがねもむらさきをゆく
眼球の影わたり鳥つらなりて夜の城門ひらけと呼ぶ声
冬をゆく波が飛沫を降らす日の滴をつなぐ逆さまのうた
雪と火が入れ替わる夜の刺繍からほどけるように生まれ出る蝶
道おおう音を踏み抜き転びつつただとめどなきとめどなさをゆく
こがねいろ双つの幻つらぬいてまなざしの果て向かうけだもの
鈍の子の唱に遠くを思い馳せ白い実りを歩むけだもの
導きも贖いも無い原の声どこまでもゆくどこまでもゆく