冬と声
木立 悟




空つかめ空つかめよと叫ぶ声かたむけるたび赤く咲く声



ふいに鳴るいかずちの背に乗せられて紅もこがねもむらさきをゆく



眼球の影わたり鳥つらなりて夜の城門ひらけと呼ぶ声



冬をゆく波が飛沫を降らす日の滴をつなぐ逆さまのうた



雪と火が入れ替わる夜の刺繍からほどけるように生まれ出る蝶



道おおう音を踏み抜き転びつつただとめどなきとめどなさをゆく



こがねいろ双つのすがたつらぬいてまなざしの果て向かうけだもの



鈍の子の唱に遠くを思い馳せ白い実りを歩むけだもの



導きも贖いも無い原の声どこまでもゆくどこまでもゆく












短歌 冬と声 Copyright 木立 悟 2008-01-20 17:40:18
notebook Home