2月14日、お引っ越し
北大路京介
「 2月14日あけておいてね 」
期待しちゃうじゃない チョコレートとか
平日で仕事も忙しいけど 有休取って会いに行くよ
引っ越しの手伝いなんて 聴かされたのは前々日
よりにもよって なんで そんな日に
「 占いでは、この日が良いの 」
それなら納得 それ、なんて占い?
行ってみたらさ 僕だけじゃないし
同じように 騙された感じのやつが
1人いて またあとから もう1人くるらしい
同じ歳? どういう関係? まさか恋敵?
いや、さえない奴らだ
君の恋愛事情は ホント謎めいていて
君の中学から親友のミキちゃんに それとなく聴き出そうとしたけれど
ミキちゃんも何も知らないし ナオちゃんも全然知らないし
前の彼氏の情報は君から直接聴いてるし
学生時代の彼氏の話も だいたい掴めている
今現在がわからない いま現在がわからない
いま 誰も彼も好きじゃないことを信じてる
もしかしたら、僕のこと好きなんじゃない?
思わせぶりな態度もあったし
君の性格の悪さも知ったうえで 付き合ってみても良いかと思ってる
付き合いたいと願ってる
ねぇ だからさぁ
2月14日じゃない
チョコレートで ほら そういうのあるじゃない
引っ越しってさぁ
なんでまた こんな時期に
本当に占いの通りにやってるの?
いま住んでいる部屋悪い物件じゃないし
駅も近いし 部屋も広いじゃない
もしかしたら、僕の知らない間に 誰かと付き合ってて
その男との想い出が部屋に染みついていて
占い師に相談か 吉方位に良い物件か
あぁ
君が この部屋に住みだしたとき
いっしょに新しい家具買いに行ったよね
次の彼氏になるのは きっと自分だと思いこんでいた
君が寂しい夜は何度か会いに来てたし
泊まらずに終電で帰ったし
真面目で優しい男のアピール じゅうぶんしてきたと思ってる
けっきょく 今日も 今日からも 都合のいい男?
そんなこと思いながら
見慣れた冷蔵庫 見知らぬ男と運んでいるし
僕が ぎっくり腰で 去年のゴールデンウィークを ベットの上で潰したこと
君は 覚えてる? 覚えてるかな?
重いもの持つのチョット怖いんだけど
君の前では やっぱりカッコつけたくて
力があるように軽々と 涼しい顔で運ぶようにしてるけれど
利用されてる気もしてて 役に立ちたい気もしてて
運転免許持ってるの僕だけ
引っ越し用の大きなトラック
自分の車以外運転するの初めてなんだけど
どうせなら 車の運転得意なヤツ呼んでおいてくれよ
無事に引っ越しが終わり
僕らは引っ越し仲間に
君の男友達も それぞれ恋人がいるらしいから
安心してみたり 野球の話題で盛り上がったりして
でも 君の魅力にみんな気づいていて
いまの恋人よりも 君が好きなんじゃないかな
ほら やっぱ
2月14日じゃない
野郎どもはさぁ 妄想したりしてきたわけで
引っ越しのバイト代は 君との夕食
2人きりじゃないのが残念だけど
「なんでも好きなもの頼んでいいから」
そんなこと言われてもファミレスで一番高いのロイヤルサーロインステーキセット
食べ放題であったとしても フードファイターのように食べられないし
かたちは なんにせよ 君と一緒に過ごせて良かった
バレンタインに なんにも ないのは やっぱ寂しい
かたちは どうであれ 君と一緒に過ごせて良かった
バレンタインに なんにも ないのは やっぱ寂しい
「 あぁ 今日って、バレンタインだったっけ? チョコは貰うの専門だったよ 」
嘘つくな この大嘘つきが
チョコをばらまいて ホワイトデーに何倍もするお返し貰ってただろ
海老で鯛を釣り チョコで いろんなもの釣ってきたくせに
かたちは なんにせよ 君と一緒に過ごせて良かった
バレンタインに なんにも ないのは やっぱ寂しい
きっと君は こっそりチョコレートを作ってるんだろう
僕のために カカオ豆から
手作りチョコレートを 心を込めてさぁ
僕は準備してるんだ
ホワイトデーのために
南アフリカに土地買って カカオ育ててるんだ