ありし天文所の休暇
もも うさぎ


その坂の上は外人墓地になっていて
少しだけ風がそよぐ。
港町を見下ろすその場所で、
土の上に居場所をなくした人々が 眠っている。

その風を、汗に濡れた指先でなでるのが好きだ。

だから今日も 真夏の陰る坂道をゆく。

急な細い坂道を、
ぐねぐねとのぼっていく。

白いワンピースと、白い帽子で。


たくさんのことは理不尽で
言葉にならずに埋もれてしまったものたちは
確かに 空中を漂いながら、
やがて墓場にゆきつくのだろう。
目の前に、確かにそれが見える。

明るすぎる日差しに、細める目が やさしく痛む。


ありし日の思い出は
スカートをまきあげる真夏の風が
熱に浮かされた戯言のように
その真価を 真珠の首飾りのように 織り上げてゆく。


世界が終るまで
あたしはその坂をのぼる。



あたしはあなたの人生に、 花を絶やさない。







 
〜ありし天文所の休暇〜


自由詩 ありし天文所の休暇 Copyright もも うさぎ 2008-01-20 03:15:06縦
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