午後のランナー
木葉 揺

白いTシャツの上
二つに束ねた髪
アミノ酸 燃やして
ショートパンツ少し鳴る

こんなに空が青い日は
「バクチがしたい!」

財布つかんで交差点
看板の文字が青いから
自動ドアめがけ
ホップ、ステップ、ジャンプ!

「いらっしゃいませ」

急冷却に汗を吸われて
タオルはショールに変わった

あやしげに絡みつく糸、糸、糸・・・
最も組織から遠い人が歩み来たから
「ドルちょーだい」って言った

カウンター内の制服たちは
突っつかれたアリ
背の高い七三分けが
アリをかき分け笑顔を見せる
「外貨預金でございますね」

為替というものは、リスクがありまして・・・
   はーい、サインしちゃいます
こちらが今日のレートでございます
しかし、私どもでは手数料として・・・
   TTSはこれね?
は・・・

ポトン!

七三分けの目玉がこぼれ落ちた
私の体の傷が一つ消えた瞬間だった

トーマス・マンの忠告も忘れ
「あなた色に染まります」と輿入れした世界
旧友たちを殺しながら
傷だらけになった日々
染まった色は赤だった・・・

ハッと景色がよみがえる
アリたちがいっそう混乱する2時45分
一人時が止まっている七三分け
私は目玉を拾って投げ返した
「サンキュー!あとは機械ね」

キシキシいう音が気持ちイイ
ベロンって出された最後の数字に
「一緒にふくらんでいこうよねっ」と語りかけ
外へ出たなら、空が青い!

白いTシャツの上
二つに束ねた髪
アミノ酸 燃やして
ショートパンツ少し鳴る

粗品で前が見えない
これじゃ借り物競争だね


自由詩 午後のランナー Copyright 木葉 揺 2004-06-22 18:02:15
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