おだやかな鳩のように
石瀬琳々

おだやかな鳩のように
私はうたたねをする
窓の外は明るい雨
静かにふっとうする時間
やがて雪になる事を予感する


読みかけの本はレイ・ブラッドベリ
夏の草いきれがむっとたちこめる
少年の吐息を追いかけて
それともあの細い足は
駆けていったきり戻って来ない


サーカスがどこからやって来るのか
手紙がどこから届けられるのか
知らなくていい事もある
ただ待ち焦がれるだけで
幸福になれる時間があって


まるで壜詰のお酒が
ふわふわと熟成してゆくように
ちっちゃなちっちゃな雛が
まるまると肥えてゆくように
静かな静かな それはかすかな訪れ


今 少年がふり向いた
はにかむように白い歯を見せて


おだやかな鳩のように
私は従順になる
明日に胸をふくらませながら
やさしい手のひらを待っている
ドアが開くのを待っている




自由詩 おだやかな鳩のように Copyright 石瀬琳々 2008-01-16 14:00:57
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