世界のどこかで叫ぶ
佐々木妖精
怒っている
ほったて小屋の前で
巣箱なんか作りやがってと
空に
怒っている
怒っている
俺の仕事が
詩人で
せっかく
命がけで
産んできたのに
何の恨みがあって
背中から
ほっぺたを這いまわり
頭頂に
オブジェを添え
祈るのかと
怒っている
彼の言葉が
あまりにもしぶき
打ち寄せるので
通行人として
まがりなりにも
はしくれとして
彼に
お前ら
と呼ばれ
私のことなんか
見てすらいない
くせに
と
口を開こうと
するのだが
彼の舌と
かぶさってしまうため
何も言わないまま
通り過ぎるという役割を
演じきって
帰りたいのだが
あまりにも
怒っているので
名刺の裏に
良い庭ですねと書いて
手渡そうとすると
ノーセンキュー
なんて横文字の訛りで
発音する
どのようにして
英語は
全くではありませんが
全くに近い極限の
よく分かりませんと
言うべきか
突っ立っているが
ものすごく
怒っているので
夕日は世界の共通語
だと思い
夕暮れを
待ってはみるが
雨粒に対し
一つ一つ
暴言を吐き始め
言葉が
言葉と
ぶつかり合って
悲愴を
奏でていたので
さすがに
かわいそうに思い
雨は
写真になると
線ですよと
悲痛な音を
和らげようと
シャッターをすって
更に火をつけるという
失敗をやらかし
疲れ果てて
うんこうんこ叫んでいたら
思いがけず
笑ってくれたので
楽しいとすら
感じ
通り過ぎ
夜空という日当を
受け取り
恥ずかしさから
布団で絶叫する前に
部屋中へ貼り付ける