「妥当な夜」
菊尾

与えられたものは何でも口に
鳴り止まない耳の奥
張り詰める神経
肌を走る痛みで全て忘れそうさ

可哀想にと蔑んでくれ
低音の呟きを背中に落とされれば
どれほど楽になれるのか
胸は震えて止まらない

黒い亀裂の夜にだけこの殻は脱げるんだ
響く声だけが俺を留めてくれている


残り香だけでも飛び立てるさ
破裂したっていい
跪いて腕は使わずに
許可が下りるまで幾度でも動くから


浅ましいだろう
だが妥当だろう
こんな優しさをくれたのは
こんな風になれるのは
そこに居る君だけだ


自由詩 「妥当な夜」 Copyright 菊尾 2008-01-14 18:07:55
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