セキュリティ・ロック。
榊 慧



あなただけが、俺を解除してくれる。













昼間は無理みたいなんだ。夜しか、集中できない。昼間は敏感になってしまっている聴覚のせいで邪魔が入り、人の気配がで極端に体が自然とこわばる。夜、一人で音楽でもなんでもいい。一人、でそれらをBGMにして作業するのが良い。自由な奴は敵が多いと言うけれど、俺はただ怯えているだけなのに敵と思われる奴らが多いのは、何故、
求められたことはない。少なくとも俺にとってはそれが日常だ。日常性に薄められた小さな不運。誰でも、不幸を持っているから、それぞれにマゾヒストなんだと思う。溺死の疑似体験をしているみたいな気持ちでひたすらもがくそうした俺を、笑うだろうか。純情廃棄、浪漫殺伐。嗚呼、かわいげの一つでも俺にあったなら。ただ醜いだけなんて、せめて、功名的な意味があればよかったのでしょうけど。
脆くて、薄い嘘で出来た芸術のようなものはいらない。俺が思うに、悲劇は劇と付くくらいだからドラマ性がないと成り立たないと思う。ドラマ性のある不運は不幸となって、人に見つかってしまう。そして誰かがそれを慰めて癒して、それで、はかないその人は、ゆるゆると幸せになっていくというのが、定説だ。いや、俺はそんなに人の人生を眺めてきたわけではないけれど、なんとなく、そういうふうになって欲しいって、思ってる人が多いことだと思う。灼熱、か、零、か。ぬるいこれは俺の惰性を延長させて、無意味な苦悩ともよべない幼稚な感情で、蝕んでいく。極端な方が、好みなのに。
絵は、良い。俺はその世界の支配者のように、その世界に一人しかいない。邪魔なやつは、いなくなる。本も、絵画も、音楽も。俺にとっては自分の世界を満たして広げて補って。紛らわしてくれる。違うところに引き込まれる。そういったことが出来るのは、昼間ではなく、夜しか今俺には出来ないのだけれど。ごく当たり前のことが出来ない、適応できないもののことを、病と呼ぶんじゃ、なかったのか?
死にたい、ではなくて。死んでしまえたらと、考えたことは結構多い。仮に俺がいなくなったとしても、世界は何か変化するわけでもない、だいたい、世界とか、くだらないとすら、思えてくるから。俺は何のことも反映しない。俺の知らない見えないところで、何かが変わっていってるとか、よく分からないけど、決して、世界と言うものが変化はしないものだと、思う。
愛想の悪さは、一級品。インスタントヒーローですら、離れていく。わずらわしいとしか感じたことの無いものが、嫌で。生まれたから、いなくなるという感覚があるだけで、最初からそうでなければ、別に何もなかったままなのに、なんで、なんだろう。原罪だ。愛してあげないと、愛をしらないとか、言うくせに。愛さなければ、愛されないって、どうなんだ。匂いも形も色も感触も味も音も何もないものをわかれというほうが土台無理なんだ。俺は、いない方が良かったというところに分類される生物だ。ああ、鬱陶しい。
例えば、スイッチのようなものがあったとすれば、良かったのに。わずらわしいこと、俺は考えたくない。




自由詩 セキュリティ・ロック。 Copyright 榊 慧 2008-01-14 15:50:05
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