サインポール
パンダコッタ


飼い猫が死んだ
風邪をこじらせて
咳がつづき
衰弱して死んでしまった
僕はそれを
トイカメラにおさめて
フイルムを
鞄の奥のほうに押しこんだ


 昔
 花火を見に行った
 そのとき
 近くの河で
 段ボールに入れられた
 猫が流されていた
 花火が打ち上がる度
 水面に
 段ボールが照らされて
 花のうえで猫が
 鳴いているような気がした

飼い猫が死んだ晩
しゃりん と
鈴の音が行進していた
月明かりに照らされて
頭巾を被った猫たちが
水瓶を担いで
家の前にとまる
「葬儀屋です」
そう告げると猫たちは
飼い猫の魂を大事そうに
水瓶におさめた
僕は一緒に
フイルムを渡した
ふたたび
水瓶におさめられるとき
飼い猫は
月の上に浮いていて
にこりと笑っているようだった

日曜日
テレヴィには
ドキュメンタリーが流れてる
ぱんだの理髪店で サインポールが
気持ちよさそうに回ってる
クラクションが鳴り
葬儀屋が停まった
飼い猫にさようならを伝えると
運転手が
丁寧にお辞儀をした
煙突からあがる
飼い猫は
冬の空へと消えていった



自由詩 サインポール Copyright パンダコッタ 2008-01-14 01:18:13
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