若い犬の旅
いねむり猫

しなやかな早足で
若い犬が旅をする

自分を妨げるものが
けっして後ろから追いつけない速さで

険しい瓦礫のスラムは
犬の柔らかな足先で
まるで草原を走るように乗り越えられる

強い使命を秘めたまなざしは
抑制されて穏やかに光をたたえ
怯えも おごりもない

新しいものとの出会いに 鋭い嗅覚を向け
自分と異なる臭いと意思に
驚きと憧れを隠さない

街角に潜む老人たちの
ワナをかぎわけ

隠された彼岸へと
躊躇無くジャンプする

若い犬の呼吸は乱れず
不満と自嘲が交差する
同世代の群れのかたわらを
軽く頭を垂れて行き過ぎる

若い孤独な犬が旅する
足先がかすんで見えないほどの速度で



自由詩 若い犬の旅 Copyright いねむり猫 2008-01-13 13:54:26
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