拡 散
塔野夏子

しんえん と呟きながら
浅瀬をえらんで 辿ってゆく
夢をつたうひんやりとした風が
時折 うなじに触れてゆく
誰かが指をつないでくれているような
そうでないような気がする

深淵
踏み込んでしまえば
のみ込まれてしまう 溺れてしまう
のではなくむしろ
その中にばらばらに拡散して
しまいそう
誰かが指をつないでいてくれたとしても
それも
ほどけて

   ばらばらになった私を
   ばらばらになった私が
   ひろいあつめ
   つなぎあわせて

   それとも誰かの指が私を

こわい
今はまだこわいから
しんえん と呟きながら

   それともばらばらになった私は
   やがてそのまま 星座のように

深淵
あるいは
深遠
踏み込まないように
浅瀬をえらんで 辿ってゆく
夢をつたうひんやりとした風が
時折 うなじに触れてゆく





自由詩 拡 散 Copyright 塔野夏子 2008-01-13 11:09:10
notebook Home 戻る