なにもないぜ、ぼくたち
青木龍一郎
公園に座っていると虚しくなることがある。
一人でポツリとベンチに座っている。
前日の雨のための、少しばかりの湿りを気にせずにボーッと座っている。
目の前の行き来する白球。
握りこぶし位の大きさの白球をバットで打ち続ける少年たちの顔には笑顔が溢れていた。
彼らのエンディングを想像している。
僕は彼らのエンディングを想像している。
鳥はさえずり、太陽は照りつけ、昨日の雨はどっか彼方へ去った。
今日はいい天気。
この公園にはホームレスが居ない。
笑い声と共に野球に興じる少年達。ロッテリアのハンバーガーを食べるカップル。
自転車を止めてテストの話ばかりしている中学生。スズメ。トンボ。酸素。狂気。
今、この公園で本当に生きてるのは僕だけだ。
彼らの決して明るいとはいえないであろう未来をただずっと見ている。
僕は、おもむろにベンチを立ち上がり大声で詩を読み始めた。
少年たちは野球を中止し、一斉にこちらを注目してきた。
公園の時間は止まった。
僕だけが時間を気にせずに詩を朗読していた。
あまりにも過激な詩を。
詩を読み終えた後、僕はブランコに乗って爆笑しだした。
爆笑しながら僕は叫んだ。
「この公園は僕のものなんだよ。みんなでてけよ。しあわせそうなかおしやがってむかつくんだよおまえらぜんいんぶっころしてやりてえよなんだよなめんなよだれもぼくの詩にちゅうもくなんてしてないんだこうえんでひとりでしゃべってるぼくをにやにやしながらみるだけじゃねえかおまえらにもぼくにもほんとうになにもないんだよなにもないんだよふざけてるよおまえら」
絶対、お前らよりも生きてやるよ!
生きてやるよ!
絶対にお前らより生きてやるよ!
涙が溢れた。僕は目を真っ赤にして、鉄棒を殴り続けた。
すぐに手から血が吹き出た。それでも僕はめい一杯のちからをこめて鉄棒を殴った。
「笑いながら平気で裏切る!笑いながら平気で殺す!
笑いながら平気で踏みにじる!笑いながら友達をつくる!
笑いながら野球する!笑いながら笑いながら笑い続ける!!
どいつもこいつも死んでる!!」
叫びすぎて喉から血が出た。
ゲボッ、ゲボッ、ダラダラ
ゲボッ、ゲボッ、ダラダラ
ゲボッ、ゲボッ、ダラダラ
その場に倒れんこんだはつぶやいた。
「富士が見たい。」
空には雲は無かった。鳥は2、3匹羽ばたいた。光は注がれた。
僕は泣いた。みんな笑った。僕は泣いた。みんな死んだ。
気づいたら公園には人が居なかった。
そこには僕も居なかったんだ。