確率
小川 葉

妻が増殖しているのを
街で見かけた
その数はおそらく
億単位だった

そしらぬ顔で
妻が帰ってきた
一人だった
いつも通り
二人で夕食を食べた
お母さんが本当は
恋愛結婚だったことを
話してくれた

その夜僕は
数億分の一の妻を抱いた
いったい誰が予測できただろう
僕と妻は
世界に二つとない確率の
声をあげた


自由詩 確率 Copyright 小川 葉 2008-01-12 00:02:51
notebook Home