かっちぃの涙
川口 掌




かっちぃが積み木を積んでいます
黄色のしかくいのを二つ並べ
赤い円柱を二個
青い円柱を二個
と 上に上に積み重ねていきます
最後に三角の緑を二個乗せて
かっちぃのお城が完成しました

おにぃちゃんの部屋で
何かをしていたおねぇちゃんが
急に駆け足で自分の部屋に戻っていきます
何かに気を取られていたおねぇちゃんには
かっちぃのお城は見えません
駆け抜けざまお城を蹴飛ばしてしまいました

一心不乱に ママとお城の話をしていた
かっちぃの顔がみるみる間に崩れていきます
ぐしゃぐしゃになった瞳をこすりながら
それでも また
積み木を積み始めました

かっちぃに聞こえない小さな声で
ママがそっとつぶやきます
目に見える形なんていつか
きっと崩れてしまうのよ

年明けの窓を閉ざした暖かい部屋で
麗らかに午後の時間が過ぎていきます






自由詩 かっちぃの涙 Copyright 川口 掌 2008-01-11 11:08:51
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