『かくれんぼ』
東雲 李葉
神さまに与えられた特別な権利を持て余しながら、
風に身を任せ流れるままに言葉を紡ぐ。
星の瞬きを数えながら隣にいれた日々を、
今でも僕は忘れちゃいないよ。
あっという間の太陽は子供の時代を追い越して。
砂場には作りかけのお山だけが取り残された。
忘れないで。君を想ってた僕がいたこと。
見つけないで。今更君に逢わせる顔なんて無いから。
いつまでも続いたあの日僕ら始めたかくれんぼ。
次の鬼は君であってほしくないんだ。
本当は大人達が僕らに与えた猶予を、
今の僕は意味無く浪費してしまうんだ。
ベッドの下に散らばったたくさんの夢や昨日も、
明日には跡形もなく消え去るだろう。
あっという間の時間は幼さ残る僕を置き去って、
ぶら下がった鉄棒を冷たく感じる季節が来るよ。
逢いたくて。君の名前を大声で叫んだけど、
気付いたの。君が僕より先に帰っていたこと。
いつまでも続くと思っていた僕らのかくれんぼ。
次の鬼はもう僕ですらないんだね。
風にたなびくスカートがただきれいで。
必ず見つけてやるんだとズボンのはしを握りしめた。
砂場を掘り下げれば地球の裏側にだって行けるんだと、
持ち前の想像力が世界のすべてであった頃…
逢いたくて。君の名前を大声で叫んだけれど、
気付いたの。もうあの頃の僕らじゃないこと。
いつまでも続くと思っていた2人だけのかくれんぼ。
次の鬼は、もう僕ですらないんだね。
泣かないで。あの日の君がそう言ってくれた気がした。
だけれど、相変わらず弱虫なままの僕みたいだから、
もう少しだけまだここに隠れていたいんだ。