悪魔はできるならば嫌われたくなかった
木屋 亞万
悪魔を見た
安いビニルの身体で
人の空虚を食っていた
記憶は物質だかんの
食えるんじゃ
塩気やら辛味のある
辛気臭えのが美味え
長すぎる手を
折り曲げて立ち
瞳は大きいが細めて
怒られた子どもの目で
じっとこちらを見ていた
何見とんのんじゃ
命を食わんだけましぞ
夢やら希望やら
甘ったるいもんは
きちーんと残しとるでに
カラスの声がして
開かれた大きな目は
半球に浮かぶ月を見る
痩せた体が照らされる
腹は減るし仕方ねい
よく死ぬためによく食うざ
皿でも泥でも食うしかねい
終わりまで保つため続けとんじゃ
空しそうな腹の音が
遠くに聞こえる夜だった