悪魔はできるならば嫌われたくなかった
木屋 亞万

悪魔を見た
安いビニルの身体で
人の空虚を食っていた

記憶は物質だかんの
食えるんじゃ
塩気やら辛味のある
辛気臭えのが美味え

長すぎる手を
折り曲げて立ち
瞳は大きいが細めて
怒られた子どもの目で
じっとこちらを見ていた

何見とんのんじゃ
命を食わんだけましぞ
夢やら希望やら
甘ったるいもんは
きちーんと残しとるでに

カラスの声がして
開かれた大きな目は
半球に浮かぶ月を見る
痩せた体が照らされる

腹は減るし仕方ねい
よく死ぬためによく食うざ
皿でも泥でも食うしかねい
終わりまで保つため続けとんじゃ

空しそうな腹の音が
遠くに聞こえる夜だった


自由詩 悪魔はできるならば嫌われたくなかった Copyright 木屋 亞万 2008-01-10 01:40:14
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