A Man Next Door
風音

隣に誰かが住んでるのは
わかっているのだ

ときおりの咳(しわぶき)
まだ夜になりかけの時間に
聞こえるラジオの音
ゆるやかにまわる
洗濯機の水音

彼は
食事を終えると
すぐに食器を洗う

そして多分
ウイスキーを飲むのだろう
ベランダで

氷がカランと鳴る
しばらくすると
煙草の香りが漂う

それから
ゆっくり窓を閉めてラジオを聴く

そしてシャワーを浴びる
短く切り上げて
まるで浴びるだけでたくさんだという位早く

シャワーの後は
動きまわる音がする
寝る支度をしているのだろう
やがてその男は眠る
物音ひとつたてずに

僕は部屋にいて
彼も部屋にいて

壁ひとつ隔てて
全く違う暮らしをしているわけだ

僕は
彼の顔を
知らない



自由詩 A Man Next Door Copyright 風音 2008-01-09 21:13:31
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