ゆらぐ
川口 掌
幼子の手引く母の
足取りは重く
歩道の上
アスファルトに滲んでいく
いつの日も繰り返される
出掛けてしまった後悔を
抱いたまま家路を急ぐ
手に取る物がそこに在る
確立を想いながら
拳を握り込む
と そこには何も無い
力を込めて突き刺さる爪の感覚に
初めて自分に気付き
淀みながら立ちあがる
水面を赤く染める山は
今尚残す未来への入口を探す
閉ざされ消えていく景色の
残像を掌に書き写し道を見つめる
呼吸を強いられる
海の向こう
より巨大な燃焼が讃えられ
燃え盛るモニュメントが築かれる
水平線を眺めながら扉を開けると
深呼吸すら止められ
ただ走る事だけが求められる
微かに聞こえる鼓動が
うつむいた時間を呼び寄せる
正義とか道徳とか
止まらない基準が傍らで
こちらを見つめ明日の
手掛かりを訪ねてくる
目の前に有る
誰かの落し物
それを見つめる視線の先に
次の一歩を踏み出す