風邪
風音

なんだかゾクゾクする。
身体中の関節が痛い。
熱があるんじゃないんだろうか。

もちろんあるに決まってる。
鼻は詰まるし
喉が痛い。
咳が止まらず
食欲も失せる。

彼は医者に行くかもしれず
行かないかもしれない。

病院の薬をきちんきちんと飲むかもしれないし
市販薬を飲むかもしれない。
あるいは全く飲まないかも。

ねえ君、暖めておくれよ。
そんな陳腐な言葉を想像する。
相手なんて誰でもいい。

風邪が長引くにつれて
彼の心は荒んでくる。

じくじくと
果てしなく治らないように思えてくる。まるで世界の終わりのように。

あんなに元気だった彼の
輪郭が少しづつぼやけてくる。

少しづつ萎んで
まるで小さなネズミのようだ。

いいじゃないか、
ただの風邪なんだよ。
得体の知れない熱病でもあるまい。

だから
この機会に
過去でも振り返ってみようか。
それとも未来を。



自由詩 風邪 Copyright 風音 2008-01-09 16:19:31
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