河口
千波 一也



あの日を
あの日、と呼ぶことは
思いも寄らないことだろう
あの日の
僕には



時は
流れてゆくものだと思う
追い越せないことは
確かだけれど、
離れ過ぎずに
ちょうど
良く

追いかけて
そのくせ振り向いて
溺れかけながら
時を

流れながら、僕は
言葉を探すのだと思う

その
さなかについて




 おまえ、と呼んだ日の
 風のまぶしさ

 オレ、という名乗りに
 支配されていた
 懐かしい匂い

 君、の響きを
 低くから受けとめた
 時計塔の空

 あなた、のなかにある
 ごまかせない幼さの
 不思議なひかり




僕はそうして
僕だけの番人として
やがての海を
予感する



 勇気と希望と回顧と戦意と



いつかの僕を
僕はどこまで否めるだろう

水たちの名の
やわらかな対峙の形の
さなかで









自由詩 河口 Copyright 千波 一也 2008-01-08 22:24:48
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