あたりまえのこと
小川 葉
あたりまえのこと
少しヒステリックに
語ってしまった夜も
いつかあの汚れた壁の
やさしさみたいに
やがて言葉なく物語る
子供が放る
軟球が壁に当たっては
帰ってくるものを
受け止めるてのひらの柔らかさ
それほど過ぎた日々はやさしい
あたりまえのこと
いま私は去っていった
すべての出来事を
宇宙と定義してみる
その価値は古く
新しい彼等を
正しく計測することすら出来ない
柔らかくなった壁を前に
やはり言葉なく立ち尽くす
子供のてのひらほどのやさしさに
私はいまだ
遭遇したことがない