「ほらっ♪」
もこもこわたあめ
「ほらっ」
あっちこっちから聞こえてくるでしょう?
あのすっかりやせ細ってしまった枯れ木の根っこのあたりから
その足元の凍えて背筋をピンッと伸ばしてる土の隙間から
相手を押しのけ押しのけ先に行こうと道を急ぐ人たちの足音にも
速度オーバーで信号無視の車のエンジン音にも
負けない 確かに聞こえる大きな足音が
「ほらっ」
あっちこっちに見え隠れしてるでしょう?
いつもよりちょっと早く駅についていつもよりちょっと早い電車にうっかり
乗り込んでしまったら
いつもよりたくさんの仕事をしようと山ほど書類の束をはりきって
抱えてきてみたら
満員電車の中でつぶされて一緒に揺られても
書類の束ほどはっきりした四角形でなくても
ちゃんと どっしりと構えてるその姿が
「ほらっ」
あっちこっちで感じるでしょう?
肌を刺すような心を射抜くような視線のちょっと後ろの方で
にぎわう人の群れの中背伸びして友達発見!背伸びしたその右隣で
飛び交う笑い声よりもゆっくりで温かく
流れるどんな陽気な音楽よりも陽気でふわふわして
包んでくれてる その優しい感触が
「ほらっ」
すぐそこ!あなたのそばにもいるよ!
もうわかったよね♪
「春の巨人♪」